バウルーの歴史 4

変わらないこのかたちで、これからも、これまでも。

現在、バウルーのホットサンド向けラインナップは、初号機のコンセプトを踏襲した、8枚切りの食パンを挟むシングルとダブルのみ。また、販売元はバウルー社の渡辺氏と旧知の仲だったイタリア商事が受け継ぎ、現在に至ります。

「僕は、変わらないのがバウルーのいいところだと思うんです。変わっていいものもたくさんあるけれど、バウルーは違う。例えば、おでんや煮物などに使われるアルマイトの鍋や行平鍋。あれらは色も形もずっと同じで、誰も宣伝していないのに、どの家庭でも見かけますよね。それは、説明をしなくても、何に使えばいいかわかるからです。そして、親の代から当たり前のように台所に置いてある。つまり日本のスタンダードなんですよ。バウルーも、そんな存在でありたいです」。そう言うのは田巻哲郎専務。バウルーの製造を担う、田巻金属の2代目です。

一時は相次ぐ模倣品にも悩まされたといいます。しかし、ここまで来ると、もはや戦うことはないのだそう。「訴えるとか、そういうことはやめました。真似が出るのはいいものの証拠。残るのは本物だから」というのはイタリア商事の清水会長。最近は、親子2代で使っているという話も聞く機会も増えたといい、「そういう話を聞くと、本当に嬉しいです」と田巻専務は目を細めます。

スライス食パンの耳まで挟めて、直火であぶってこんがり蒸し焼きにできる…、そんな至極シンプルな調理器具で、家庭の食卓に笑顔をもたらしてくれたバウルー。火加減の調整や、ひっくり返すタイミングをみるなど、≪おいしさを生み出す楽しさ≫がここにあります。

近年では、バウルーを持ってキャンプに出る人も少なくないそう。アウトドアで、手軽に温かく、腹持ちのいいものが作れるのが人気の理由。手でつかんで食べやすく、工夫次第で飽きのこない味が楽しめるのも魅力です。

10年売れたら大ヒットと言われる業界で、今や足掛け40年のロングセラー。あらゆる食材を乗せて、バウルーは今日も、日本のあちこちで活躍しています。


【取材協力】
2011年7月13日 田巻金属株式会社のみなさん
2011年8月1日 イタリア商事株式会社社長 佐野松比古さん
2011年8月18日 イタリア商事株式会社会長 清水透さん